人手不足と運送業
人手不足だ。人手不足だ。と叫ばれている昨今。
特に飲食、宿泊、運輸、介護、建設がメディアでも取り上げられている主なとこでしょうか。その中で私が仕事柄、話を聞かせてもらうことが多い「運送業界」の人手不足に対しての考え方で、非常に危険だと思ったことをあげてみます。
「運送業」この業種に対してのイメージは、労働時間(拘束時間)が長い、休みがない、給料が安い、ガラが悪い(大手を除く)、学歴が低い(大手を除く)、こんなとこですか。まぁ、なかなか良くないです。
※対象は5~20台程度所有の中小企業経営トップ、サンプルは20件程度と多くはないので、こんな傾向にある、程度で認識してもらえるとありがたいです。
経営トップと書いてますが、そもそも経営トップ以下はすべて運転手なんてとこもザラにありますので、悪しからず。
働き手のせいにする
運転手あがりで、50~70代がの経営者がほとんどです。
「1日中走ってやってきた。それなのに最近の若いやつらは根性がない!」
この言葉は多くの中小経営者で聞かれます。
今の現状12~16時間程度の労働時間で、他業種に比べ労働時間が長く、キツイ仕事なのを理解できていない経営者の方が多いです。働き手側が、休みと労働時間を重視する傾向にあるので、この溝を埋めないとダメでしょうね。
規制緩和のせいにする
1990年物流二法の大改正により、新規参入が増え、ダンピングの影響で運賃水準が低下しました。
これにより、業者が増えた→価格競争する→運賃下がった→燃料上がった→給料減る→働き手がこない→オレ悪くない、国が悪い。と、こうなる経営者も少なくありません。
これ27年前の話だからね?まだこれのせいにしてるようじゃ無理がある。
約40,000(1990年)→63,000社(2007年)※2007年をピークに緩やかに減少中で、現在は約62,000社
職種のせいにする
一昔前に、学歴はないけど手っ取り早くお金を稼ぎたい人が多く参入する職種でした。
言い方は悪いけど、底辺の職種であるイメージが強く、これを業界全体で変えることは厳しいでしょう。佐川急便が佐川男子!なんてことをやって、イメージアップを図ろうとしたけど、効果あったとは思えないし。
ただ、職種の全体的なイメージを変えることは厳しいでしょうが、自分の会社を変えることは可能じゃないかと思います。
コンプライアンス(法令順守)のせいにする
ここ数年、全業種でコンプライアンス強化が進みその対応に追われる企業も少なくないでしょう。
運送業でも拘束時間の徹底、事故管理の徹底など毎年1つは改正されています。
この改正は、将来的にごく当たり前になっていくことが容易に想像できることを理解しようとしない経営者は多いです。
最低限のコンプライアンスを守れない会社に誰がくるんでしょうか?
待ちの姿勢を崩さない
他業種と違い開業時に荷主を獲得すると、その後は営業をしない経営者が多いです。
営業職の存在がそもそもいません。台数に見合った仕事が入れば営業をかける必要もないので、経営者=営業のスタイルで賄えます。
経営者=営業のスタイルでありながら、営業が苦手で積極的には動きません。
当然新規の荷主をつかむこともないので、仕事がなくなっては困ることから、現荷主の要望はすべて受け入れがちです。
経営が、より厳しくなるのは必然と言えるでしょう。
規模が小さいせいにする
「〇〇さんは大手だから」、「あそこは規模が違うから」この言葉も多いですが、完全にずれてますよね?
元から大きな会社はありません。どの会社も最初は小さな成功を重ねていき、徐々にその規模を広げていっています。(例外はありますが)
『小さな会社だから何もできない』っておかしいでしょ?
逃げるにしても、もう少しマシなことを言いましょう。
運転手の延長と捉えている
運転手の延長で社長になることには何ら問題はない。
目の前の仕事をやる大切さは理解できるが、最前線で現場仕事を行いすぎて短期的なプランを組むことすらしない。
名目上は社長であるが経営者の仕事とはかけ離れている。
まとめ
もちろんすべての中小トップが他人のせいにして、何も考えないわけではありません。
労働時間短縮、給与up、運賃交渉、新規荷主獲得、ISO取得と様々な取り組みをしている経営者もいます。
運転手の高齢化(40代以上が70%程度)もあり、これから更に人手不足が続き、規制も厳しくなり、経営面で苦しい状況です。
1人で複数台運転して利益を出すことは不可能なので、考え方を少しは変えてほしいものです。
また、運転手の方も『運転手の枠組み』にとらわれず、トップへの指摘、意見、提案などを行うことが良いでしょう。